「老後も家賃を払い続けられるだろうか。」
「独身で賃貸暮らしだと、高額な老後資金が必要なのでは?」
このような不安を感じている方は少なくありません。
特に独身で賃貸物件に住んでいる場合、老後も家賃の支払いが発生するため、持ち家の人より不利なのではないかと考える方も多いでしょう。
しかし、賃貸だからといって、必ずしも老後資金が不足するとは限りません。住宅ローンの返済や固定資産税などの負担がないというメリットもあります。
この記事では、賃貸住みの独身の方に必要な老後資金はいくらなのか、また、今から始められる資産形成方法や賃貸する際のリスクなどについて解説します。
【独身の老後資金】賃貸の場合は住居費を早めに準備し始めることが大切

独身で賃貸住宅に住む方は、老後も毎月の家賃の支払いが続くことを前提に老後資金の準備計画を立てる必要があります。持ち家であれば住宅ローン完済後は毎月の住居費を抑えられるケースがありますが、賃貸では家賃の支払いが生涯続くためです。
特に独身の場合は、家賃を分担する家族がいないケースが多く、ほかにも生活費や医療費、介護費などを一人で負担する必要があります。
とはいえ、必要以上に悲観する必要はありません。老後の住居費は、以下の3つのポイントを押さえて検討すると良いでしょう。
- 老後に支払う住居費を見積もる
- 年金だけでは不足する金額を把握する
- 貯蓄や資産形成を早めに始める
「老後資金はいくら必要か」ではなく、「自分はいくら不足する可能性があるのか」を把握することが、老後生活の経済的な不安を解消する近道です。
独身で賃貸住みの場合に必要な老後資金はいくら?
独身で賃貸住みの高齢者に必要な老後資金はいくらになるのかについては、まず現在のシニア世代が、どのくらいの生活費がかかっているのかを知る必要があります。
そのうえで、毎月生じる家賃負担をプラスして、老後資金として準備する金額の目安を確認していきましょう。
独身の毎月の生活費は平均約15万円
総務省の調査(※)によると、65歳以上の独身無職世帯における平均的な生活費は14万8445円です。
公的年金を主とした収入が平均13万1456円で、そこから社会保険料や税金が1万2990円差し引かれ、手取り額(可処分所得)は11万8465円となります。
手取り額11万8465円に対し、生活費が14万8445円かかるため、毎月2万9980円の赤字となっています。
しかし、この生活費14万8445円の中の住居費は、持ち家の方を含めた金額となっており、平均1万1416円です。1万円強では家賃として少なすぎるため、賃貸の場合はさらに数万円を上乗せした金額が必要になると考えられます。
※総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」
独身が老後の生活費を補填するために必要な金額
独身の老後資金は、仮に家賃を5万円とした場合、最低でも男性で約1400万円、女性で約1900万円必要になる可能性があります。なぜこのような金額になるのか、根拠を確認しましょう。
前出の総務省の調査結果で、65歳以上の独身無職世帯の生活費は毎月約3万円の赤字になることがわかりましたが、これは住居費が1万1416円の場合です。
仮に家賃が5万円とした場合、住居費があと4万円ほど多くかかることになり、結果として、毎月の赤字が約7万円になる可能性があります。毎月7万円の赤字が生じると、年間では84万円になる計算です。
厚生労働省「令和6年簡易生命表の概況」(※)によると、男性の平均寿命は81.09歳、女性は87.13歳です。
男性が81歳、女性が87歳まで生存した場合、65歳から毎月7万円ずつ赤字になると、それぞれ以下の金額が不足します。
- 男性:1351万5600円
- 女性:1858万9200円
男性では約1400万円、女性は約1900万円が不足する可能性があるため、生活費の補填として老後資金を準備しておく必要があるでしょう。
ただし、具体的な生活費は、ライフスタイルや住む地域などによって異なるため、あくまでも目安の一つとして捉えておきましょう。
※参照:厚生労働省「令和6年簡易生命表の概況 1主な年齢の平均余命」
持ち家の方が有利?賃貸が不利とは限らない理由

「独身の老後は持ち家のほうが有利」と見聞きすることがありますが、一概にそうとはいえません。
老後も賃貸に住み続けることには、持ち家にはない「身軽さ」と「支出の見通しの立てやすさ」というメリットがあります。
高額な修繕費を負担しなくて済む
賃貸物件の入居者には、修繕費用は基本的にかからないというメリットがあります。賃貸物件の経年劣化や通常の損傷の修繕費用は、大家さん(管理会社)が負担するのが一般的です。
持ち家の場合、築年数が経過するにつれて外壁や屋根の修繕、キッチンやバスルームなどの水回りの交換など、まとまった金額の修繕が発生します。これらをすべて自己負担するだけでなく、業者の手配も自分で行わなければなりません。
老後は主な収入が年金のみになるケースが多いため、数十万円や数百万円といった高額な修繕費が生じないことは経済的・精神的にゆとりができます。賃貸住みの方の住居資金には、毎月の家賃と一定年数ごとの更新料を組み込んでおけば良いため、無理のない計画が立てやすいです。
固定資産税がかからない
賃貸物件では、固定資産税や都市計画税などの納税義務は大家さんにあるため、入居者に納税負担がかからないというメリットもあります。地価が高いエリアの場合、税額が高額になることが多いですが、賃貸であれば老後資金として組み入れずに済みます。
一方、持ち家の場合、毎年固定資産税や都市計画税を納付しなければなりません。これらの税金は、持ち家を有している限り払い続けるものです。たとえ住宅ローンを完済していても毎年まとまった支出が発生するため、計画的に準備していく必要があります。
ライフスタイルに合わせて住み替えがしやすい
賃貸物件は、ライフスタイルや身体状況の変化などにより、より適した住居に住み替えしやすいです。
60歳代・70歳代・80歳代と年齢を重ねていくごとに、健康状態や周囲の環境などは大きく変化していくでしょう。例えば、体力の低下により階段の上り下りが難しくなった場合は、エレベーター付きのマンションや1階の部屋へ引っ越すといった対策が取れます。
また、近くに病院がある物件に引っ越したり、「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」に移行したりしやすいです。
持ち家の場合、さまざまな事情により簡単に住み替えができないことが多いですが、賃貸は状況に合わせて柔軟に対応できます。
賃貸住みの独身が老後資金で考えておきたい2つのリスク
独身の賃貸住みの方が老後資金について検討する際には、現役時代とは収入面や健康状態などが変化することを十分に考慮する必要があります。
老後資金の準備計画で注意すべき2つの点を解説していきます。
収入に対して家賃の割合が大きくなる可能性がある
現役時代は問題なく家賃を払えていた方でも、年金生活に入ると支払い負担が大きく感じやすくなります。例えば現役時代は収入に占める家賃の割合が20%だった場合でも、年金生活では30〜40%を占めることもあるでしょう。
そのため、老後を見据えて、年金生活に入る前から家賃の安い物件に住み替えたり、物価の安い地方へ移住したりするのも選択肢の一つとなります。
また、高齢者向け住宅を検討する場合は、あらかじめ必要な費用を把握して、逆算して貯蓄を計画的に進めることも必要になるでしょう。
状況に応じて、複数の選択肢を持っておくといざというときに対処しやすいです。
医療・介護費用が増える可能性がある
高齢になるにつれ、医療費や介護サービスの利用が増える可能性があります。公的医療保険や介護保険制度を利用することも可能ですが、自己負担がなくなるわけではありません。
特に、独身の場合は家族のサポートを受けにくいケースが多いため、家事代行や見守りサービスなどを利用することも考えられます。サービスに支払う費用も、老後資金の一部として想定しておくことが大切です。
老後資金を準備する方法

賃貸済みの独身が老後資金を準備するには、まず日々の生活費を見直し無駄を省く必要があります。余分な支出を減らせると、住居費に充てられる資金や、貯蓄や資産形成に充てる資金を確保できます。
家計を見直して住居費の割合を確認する
最初に取り組むのは、現在の家計の見直しです。一般的に家賃は、手取り収入の30%以内に収まると家計への負担を抑えやすいとされています。
もし家賃の割合が高い場合は、無理のない金額の物件へ住み替えることも選択肢の一つになります。
仮に家賃を毎月1万円ずつ削減できれば、年間12万円を老後資金に充てることも可能です。
NISAやiDeCoで長期的に資産形成する
老後資金づくりでは、毎月決められた金額を貯蓄することも有効ですが、より積極的に資産運用したい方はNISAやiDeCoを取り入れるのも良いでしょう。
NISAは運用益が非課税になる制度で、長期・積立・分散投資との相性が良い商品です。また、iDeCoには掛金が所得控除の対象になるなどのメリットがあります。
ただし、投資商品には元本割れのリスクがあるといった注意点も存在するため、仕組みやデメリットを十分に理解したうえで取り組むことが大切です。
老後も働ける環境を整える
定年退職後も働ける期間を延ばすことも、有効な老後資金対策の一つです。
高年齢者雇用安定法により、企業には定年を65歳まで引き上げることが義務付けられているほか、70歳まで雇用することが努力義務とされています。こういった制度により、定年退職後も働き続ける選択肢が拡大しつつあります。
フルタイム勤務でなくとも週に数日働くだけで、年金以外の収入が得られるため生活に余裕が生まれるでしょう。
参考:厚生労働省「高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~」
独身の老後資金は賃貸費用も考慮して準備することが大切
賃貸住みの独身が老後資金について考える際は、住居費を含めた現実的な貯蓄計画を立てることが大切です。
老後に必要な資金は、年金受給額や毎月の生活費、住居費などにより異なります。現役時代のうちから「どのような暮らしを送りたいか」を考え、ライフプランを整理しましょう。
十分な老後資金が確保できるように、自身に適した資産形成方法を選ぶことが重要です。

FP発信|老後のお金
元金融機関勤務のFPです。
人生100年時代といわれるようになって久しい現在、ゆとりある老後資金形成のために役立つ情報を発信中です。
【保有資格】
・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
・AFP
・一種外務員資格
・年金アドバイザー
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